トレンド

MR技術とは?VR・ARとの違いやビジネスの活用事例も徹底解説

2024.11.25

MR技術とは?VR・ARとの違いやビジネスの活用事例も徹底解説

MR技術は現実空間の映像とデジタル情報を融合させる仕組みで、建築・製造・医療などさまざまな分野で活用されています。

今回の記事ではMR技術の基本的な仕組みやVR・AR技術との違い、具体的な活用事例についてまとめました。

目次

    MR技術とは|現実と仮想の融合

    241125_02.webp

    MR(Mixed Reality・複合現実)技術とは、現実世界の映像とデジタル情報を融合させる技術です。MRデバイスを使うことでその世界を体験できます。

    MRデバイスはセンサーやカメラで現実空間を撮影し、シースルーのレンズ部分にデジタル情報を表示します。

    MRデバイスの装着者は、まるで現実世界の中にデジタルコンテンツが現れ、実体があるかのような体験ができるのが特徴です。

    ほかにも、MR技術には以下のような特徴があります。

    • 3Dモデルを拡大・縮小・回転など操作が可能
    • ユーザーの動きをリアルタイムで追跡する

    MR体験ができる代表的なデバイスにはApple Vision ProMeta Quest 3などが挙げられます。

    ▽関連記事
    VRとARの違いを3秒で説明する画期的方法「眼の前の景色が変わるのがAR」と覚えればOK

    VR・AR技術との違い

    VR・AR技術との違いは下記の通りです。

    技術

    内容

    VR(仮想現実)

    仮想の空間を現実のように体験できる技術

    AR(拡張現実)

    現実空間の目印にデジタルコンテンツを重ね合わせる技術

    MR(複合現実)

    現実空間の形状を認識(空間マッピング)し、その現実空間に自然な形でデジタルコンテンツを重ねて表示する技術

    「VRゴーグル(ヘッドセット)」「ARグラス」など、各メーカーでデバイスの呼び方はまちまちですが、デバイスによっては「VRヘッドセット」を名乗りながらMR機能を併せ持つMeta Quest 3のように、呼称に関わらず、AR技術・VR技術・MR技術が複数含まれているものもあります。

    詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

    ▽関連記事
    「MR(複合現実)」とは?活用事例や体験方法などご紹介【知っておきたいXRの専門用語】

    MR技術を活用して実現できる3つのこと

    MR技術を活用して実現できることは、以下の3つです。

    • 現実世界ではできないことを体験できる
    • 遠隔地からリアルタイムで現場作業をサポートできる
    • 遠隔地のユーザー同士で体験を共有できる

    現実世界ではできないことを体験できる

    MR技術は現実世界の映像にデジタルコンテンツを投影し、ユーザーがリアルに近い形で操作できるのが特徴です。

    投影したデジタルコンテンツは「拡大・縮小・回転させる」「ユーザーがデジタルコンテンツの横や後ろに移動して確認する」ことなどが可能です。

    MR技術では空間と物体を認識できるので、奥行き情報がリアルに感じられるからこそ、デジタルコンテンツをARよりもリアルに感じ、体験することができます。

    こういった特徴から、実際におこなうと危険が伴う現場作業や、高額な費用がかかる医療分野において、訓練への活用が進んでいます。

    遠隔地からリアルタイムで現場作業をサポートできる

    MR技術を用いて、遠隔地から現場作業をリアルタイムでサポートするといった活用方法もあります。

    たとえば、現場の状況を映像で確認しながら具体的な指示を出したり、視界の映像上に描画して場所を指し示したりできます。

    MR技術を活用すれば遠隔地からでも技術継承が効率的におこなえるため、現地に熟練者を派遣する必要がなくなります。そのため、熟練者を派遣するための移動にかかる時間やコストの削減が期待できます。

    MR技術による遠隔地からの作業支援は、建築・医療・土木・製造などさまざまな業界で活用できます。

    遠隔地のユーザー同士で体験を共有できる

    MR技術は遠隔地のユーザー同士で同じ3Dモデルをリアルタイムで見られるため、体験を共有できます。

    例えばMR技術を活用した会議では、遠隔参加者の映像をMR空間上に出現させることで、参加者同士が同じ空間にいるかのような感覚でコミュニケーションを取れるのが特徴です。

    ほかにも、製造業や建設業などで立体的な情報が重要な場合、複数人が同時に同じ3Dホログラムを見て確認することで相互の認識のずれを減らせます。

    MR技術を用いたビジネス活用事例

    MR技術を用いたビジネス活用事例について、以下の3つの分野を紹介します。

    • 教育・研修分野
    • 建設・製造業分野
    • 医療分野

    教育・研修分野

    教育・研修分野にMR技術を使用している主な企業を紹介します。

    自動車修理・点検業務での活用|トヨタ自動車

    トヨタ自動車株式会社ではMR技術を活用して整備士の習熟度を高め、技術レベルの標準化を図っています。MRデバイス「HoloLens 2」を使用し、整備士が3Dの作業手順書などを現実空間に重ねて表示できるようにしました。

    整備士はMRデバイス上の作業手順書を確認しながら、実際に作業を進められます。手順書が汚れる心配もなく、手に持つ必要もないため、両手で作業が可能です。そのため、新人の整備士でも短期間で質の高い作業が習得でき、作業技術レベルの標準化や作業品質の維持につながります。

    消化器トレーニングMR|深谷歩事務所

    株式会社深谷歩事務所が提供する「消火器トレーニングMR」では、現実空間にMR上で仮想の火災を発生させ、3Dの消火器を使って臨場感のある消火訓練を体験できます。

    MRでの消火訓練は準備や片付けが簡単であり、数分という短時間での実施が可能で、企業や自治体の防災訓練に導入されています。

    建設・製造業分野

    建設・製造業分野にMR技術を使用している主な企業を紹介します。

    NTT XR Real Support|NTTコノキュー

    NTTコノキューが提供する「NTT XR Real Support」は、MR技術を活用した遠隔作業支援ソリューションです。同ソリューションを利用すれば、遠隔地にいる支援者が現地の作業者の隣にいるかのようなサポートを行えます。

    最大6名までの同時通話が可能で、現地と遠隔地のユーザーがリアルタイムでコミュニケーションを取れるのが特徴です。さらに、パソコンからの空間ポインティングや描画を通じて、現地の作業者に具体的な指示を出せます。

    TS+|インフォマティクス・千代田測器

    241125_03.webp

    (出典:道路拡幅工事の完成検査にMR技術を活用|株式会社インフォマティクス

    株式会社インフォマティクスと千代田測器株式会社は、MR技術を活用して道路拡幅工事の完成検査を行う「TS+」を共同開発しました。

    TS+はMicrosoft HoloLens 2を用いて、現実空間に高精度な3Dモデルを投影するシステムです。測量機器と連携して3Dモデルの投影位置を高精度に表示し、位置ずれをリアルタイムで補正できます。

    医療分野

    医療分野にMR技術を使用している主な企業を紹介します。

    NURAS|長崎大学

    「NURAS」は関節リウマチ患者を対象とした、次世代型オンライン遠隔医療システムです。

    深度カメラ「Azure Kinect DK(Microsoft)」を使用し、患者の病変部位を3Dで撮影します。さらに、専門医がHoloLens 2を装着し、MR空間上でリアルタイムかつ立体的に病変部位の観察や確認ができます。

    専門医と患者はMicrosoft Teamsを用いてビデオ会議形式で診察を行うため、リアルタイムでの指示や会話が可能です。

    患者は自宅にいながら専門医による診療を受けられ、移動の負担を軽減できるのが大きなメリットです。

    MR Anatomy|日本メドトロニック

    (出典:CT検査画像を複合現実で観察できるトレーニングシステム「MR Anatomy」を提供開始|日本メドトロニック株式会社

    日本メドトロニックは、キヤノン・キヤノンITソリューションズ・ザイオソフトと共同で「MR Anatomy」を開発しました。同システムは、CTで撮影した肺の構造をMRで観察できる医療従事者向けのトレーニングシステムです。

    近年、肺がん手術における区域切除の増加に伴い、医療従事者にはより精緻な肺の構造の理解が求められています。

    同システムは高精細な実寸大の肺を3D表示するため、臓器・血管・病変の位置関係を立体的に理解できるようになります。

    MR技術の発展でビジネスの可能性も広がっていく

    MR技術は現実と仮想を融合させ、3Dモデル投影や遠隔作業支援を実現する技術です。

    教育・建設・医療などさまざまな分野で活用され、効率化や技術継承に貢献しています。VR・ARとの違いを理解し、これからも発展するMR技術を活用してビジネスに役立てましょう。

    この記事を共有する

    関連記事