XR Life Digをご覧の皆さん。最新のXRデバイスに触ってみたい、アプリを体験してみたいと思うことってありませんか?
ビジネスにXRを活用しようとしている人の中には、「XRの最新動向をまとめて知りたい」という人もいると思います。
そんな皆さんにおすすめしたくなるイベントが毎月、都内某所で開かれているんです!
会場はなんと、日本を代表するテックカンパニー、LINEヤフー株式会社の本社(東京都千代田区)。XRに興味がある人なら誰でも参加することができます。しかも参加費は無料!
お話を伺うとともに、2024年10月29日(火)19:00~21:00に開かれた同イベントに参加してきました。
LINEヤフーの本社で毎月開催、初心者も歓迎
「LODGE XR Talk」と呼ばれるこのイベントがどのようなものか?LINEヤフー株式会社 会長室 コラボレーション推進部に在籍し、同イベントでモデレーターを務める市川 大翔(いちかわ たいしょう)さんは次のように話します。
「XRをキーワードとしたトークと、出展者による展示からなるイベントです。2023年3月から毎月一回開催し続け、今回(2024年10月29日開催)でようやく20回目を迎えることができました」(市川さん)
会場はLINEヤフーの本社17階にある「LODGE」(ロッジ)と呼ばれるスペース。広々としたこのフロアに、モデレーター用の椅子2脚と大型モニター1台が設置され、さらに参加者用の椅子がズラリと並べられ、イベントは始まります。
トークは冒頭の30分程度。市川さんともう一人、このイベントでモデレーターを務めるIKKOU(いっこう)さんとの掛け合いにより行われます。
IKKOUさんは、これまた大手インターネット企業に籍を置くかたわら、自ら代表を務めるONE SHOT STARでXR系ソフトウェアの開発をしています。「XR元年」と呼ばれた2016年より前からXRに関わってきた、XR大好き人間であり、XRのプロフェッショナルです。
トークではIKKOUさんのキュレーションにより、直近約1カ月に発表されたXRデバイスやXR関連企業の動き、これから開かれるXR関連イベントなどの話題が取り上げられます。
各トピックを紹介するだけでなく、そこにモデレーターお二人の視点や感想・分析も加わります。このトークを見て・聞いているだけで「XR事情通」になれた気分になります。
イベントの参加者(来場者)は大体30名~50名程度、出展者は数組~10組程度だそうで、意外と小ぢんまりしています。しかし、そこがいいんです——。
XRの専門家ばかりがたくさん集まるイベントだとしたら、初心者の方は「自分が行っても大丈夫かな・・・」なんて尻込みしちゃいませんか?
LODGE XR Talkはそんな、関係者や専門家だけが集まる会のような閉鎖的な空気が全くありません。「初心者も大歓迎」と市川さんが言う通り、カジュアルでものすごくオープンなのです。
二人のトークが終わると、その日の出展者が前に出て、参加者に向かって出展内容について簡単にプレゼンテーションします。プレゼンテーションといっても、これまた肩肘張ったものではありません。
「今日はこんな面白いものを持って来ました!」「まだ試作品ですけど持ってきちゃいました」という、楽しげでマイルドなノリなのです。
そして「体験セッション」へと移り、参加者は会場に用意されたお菓子をかじり、お茶とジュースを自由にいただきながら、思い思いに展示を見て回ります。
参加者の皆さんも出展者の皆さんも楽しそう。XRを心から楽しんでいるように見えます。
XR事業社、開発者、ユーザーがつながる場
なぜ、どのような目的でこのようなこのようなイベントを開いているのか、モデレーターのお二人に聞きました。
「イベント会場となるLODGEは、LINEヤフーの中で“オープンコラボレーションスペース”という位置づけにあり、社内外の人と人をつなぐ場としての役割を担っています。LODGE XR Talkもその目的に沿ったコミュニティ・イベントとして、XRを軸に社内外の人々をつなぐ目的で開いています」(市川さん)
実際、参加者にはLINEヤフーの社員やグループ会社社員が数多くいるそうです。同グループとしてXR事業をまだ本格的に立ち上げていない状況の中、その“芽”となるものを探す意図が根底にあるようです。
一方で、IKKOUさんには少し違う目的があります。
「とにかくXRが盛り上がってほしい。そのために、たくさんの人にXRを好きになってほしい」(IKKOUさん)
IKKOUさんは2010年代前半、ゲーム会社に勤めていたとき、会社が開発用に購入した「Oculus DK1」「Oculus DK2」という黎明期のOculusシリーズに触れる機会があったそうです。今から10年ほど前のことです。
当時、アメリカでクラウドファンディングで資金調達して製造された、希少なそのVRゴーグルを、苦労して国内に輸入し、難解な取扱説明書を解読し、装着し、初めて“XRの世界”に足を踏み入れた瞬間——。
「感動しましたね」(IKKOUさん)
その感動を人々に伝えたいという強い思いがあると言います。その証拠にIKKOUさんは、2016年から「xR Tech Tokyo」というXRの定期イベントを自ら開いてきました。
「国内のXR開発者がプロダクトやその試作品を持ち寄り、他人からフィードバックをもらったり、開発者同士がつながったりできる場をつくりたかったんです」(IKKOUさん)
しかしコロナ禍で対面での開催が難しくなり、イベントはストップ。そんな中、市川さんと出会い、LODGE XR Talkでモデレーターを務めることになったそうです。
二人の思いが混ざり合うことにより、このイベントが稀有で、より魅力あるものになっていると言えます。
XR事業社・開発者にとっては、LINEヤフーという大手テックカンパニーで、“気軽に”製品や作品を披露することができますし、専門家ではない一般ユーザーも、純粋にXRを楽しむことができるからです。
MiRZAも出展!未発売デバイスや“飛び入り展示”も
今回おじゃました第20回 LODGE XR Talkでは、8つの企業・開発者が展示を行いました。
Apple Vision Proで遊べるXRゲーム、まだ試作段階にあるXRデバイス、スポーツカーを3D撮影した映像をVRChatで見られるプログラム、「ドラムを叩くおもちゃのクマさん」をPC画面に映し出しアナグリフ(赤青メガネ)で立体的に見る作品、最新の3Dスキャナーなどなど——。
実は今回、NTTコノキューデバイスも「MiRZA」を展示していました。国内大手通信キャリアのグループ会社がリリースしたXRグラスという珍しさもあるのでしょう。MiRZAの展示には参加者が列をなし、ひときわ注目を集めていました。
展示内容は、ブラウザ画面を複数開いて見る「オフィスワーク(MiRZAアプリ)」と、ARの土偶を手でつかんで鑑賞する「ミュージアムガイド(ARミュージアム)」の2つ。
MiRZAを掛けた瞬間、その軽い掛け心地に驚く人、現実空間に6DoFで浮かぶブラウザ画面をレイ操作して楽しむ人、ハンドトラッキングのなめらかな動きに感心する人・・・。
中には「電池はどれくらいもつんですか?」「どんな人たちに向けてMiRZAを販売するんですか?」と、興味津々に質問している方もいました。
▽2024年度グッドデザイン賞のMiRZAのページはこちら
https://www.g-mark.org/gallery/winners/21763?text=MiRZA
その隣では、WebAR(ブラウザ上でARを体験する技術)事業を展開する株式会社palanが、MiRZAを使った展示を行っていいました。その場で自分のARアバターを作成し、それをMiRZAに表示してハンドトラッキングで楽しめるという展示でした。
発売されたばかりのXRデバイスと、それを使ったアプリが同時に体験できるとは、非常に珍しい機会といえるしょう。
さらに驚いたのはこの日、予定外の“飛び入り展示”があったこと。その方は、国内発売されたばかりのMeta Quest向けペン型デバイス、ロジクール「MX Ink」を、メーカー社員でもないのに「使いやすくて注目しているから(皆さんにも触ってほしい)」と持って来たのでした。
かくしてこの日、Meta Quest 3を装着して会場をうろうろ歩き回りながらペンで“空中”に絵を描き、「おーっ!」と驚く人の姿が絶えませんでした。
飛び入り展示はよくあるそうで、このようなうれしいハプニングが起こるのも、LODGE XR Talkならではなのでしょう。
イベントに参加し、一緒にXRを盛り上げよう
LODGE XR Talk今後の展望について市川さんは次のように述べます。
「自分は社内で本業としてデザインをしているので、その延長線上にある形でこのイベントを開催できたらいいなと思っています。それこそデザインやメディア・アートなど、XRを活用することで可能性を広げられる分野がまだまだあるはず」
デザインやアートなどに関わっている人・関心がある人にも、ぜひ積極的に参加・出展してほしいとのことでした。
IKKOUさんは、「高校生や大学生にもLODGE XR Talkで展示してほしい」と語ります。実際、過去に高校生のサークルが作品を出展した例もあるそうです。
確かに、ビジネスイベントに出展するのはそれなりに費用がかかるため、学生にはハードルが高いことでしょう。しかし、LODGE XR Talkなら出展料はかかりません。しかも、XR事業社・開発者や一般ユーザーからもフィードバックがもらえます。
XR好きな学生たちをインキュベートする場になれば、XRの普及・拡大をさらに後押しできるかもしれません。
そんなIKKOUさんはXRの盛り上がりに確かな手応えを感じているそうです。
「業界を細かく見ていくと、例えばVRでアバターのモデルをつくる需要が増えており、それを仕事にする人も増えています。XR業界・市場は今も拡大傾向にあると考えています」(IKKOUさん)
LODGE XR Talkは、そんな時代の変わり目を肌で感じ、触れて、楽しむことができるイベントです。特に首都圏にお住まいの皆さんはぜひ足をお運びください。
会場に行くのが難しいという方は序盤のトークだけでも、YouTubeでご覧いただけます。過去のアーカイブ映像もありますよ。
参加ご希望の方はPeatixから申し込みが可能です。
あっ、それともう1つ。LODGE XR Talkは半年に一度6月と12月、休日に規模を拡大して開催されます。通常開催よりも参加者・出展者が集まり、ひときわ盛り上がるそうで、こちらも要チェックです!
次回は12月21日(土)に「LODGE XR Talk Vol.22 Winter Special」として開催されます。
興味のある方は、ぜひお気軽にご参加ください!