
ポジショントラッキングとは?
ポジショントラッキング(Position Tracking)は、スマートフォンやヘッドマウントディスプレイを使用するユーザーの位置と向きを検知し、追跡する技術です。
ポジショントラッキングによって、現実世界のユーザーの前後、上下、左右の動きは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、複合現実(MR)にリアルタイムに反映されます。
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ポジショントラッキングの仕組み
ポジショントラッキングでユーザーの位置や動きを検知・追跡する仕組みは、デバイスの外側から位置を観測するOutside-In方式と内側(デバイス自体)から外を観測するInside-Out方式があります。
なお、ポジショントラッキングに対応しているデバイスには「6DoF(シックスドフ)」機能が実装されています。似たような言葉に3DoF(スリードフ)がありますので、両者の違いについては、下記の記事もご覧ください。
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①Outside-In方式:外側から観測する方式

Outside-In方式は、ヘッドマウントディスプレイやコントローラーについている光源を外部カメラでとらえ、ユーザーの位置や向きを検知・追跡する仕組みです。
外部カメラが追跡するのは、ユーザーが装着するデバイスが発する可視光源や赤外線LEDです。
一方で、カメラ側が赤外線を発して装着デバイス側が受光するといったシステムを採用しているものもあります。ポジショントラッキングをするのに、外部カメラが必要な方式と理解するとわかりやすいでしょう。
②Inside-Out方式:内側から観測する方式

Inside-Out方式では、ヘッドマウントディスプレイに内蔵されたカメラと複数のセンサー(IMU*1)によってユーザーの位置や向きを観測・推定します。
Inside-Out方式を実現させるうえで重要な技術がSLAMです。
SLAMとはカメラでスキャンした情報を元に自己位置の推定と、地図の作成を同時に行う技術のことです。知らない場所から、頭の中で地図を作成し、知っている場所を特定するイメージと考えるとわかりやすいでしょう。

ただしSLAMのみでは、カメラのフレームレートに依存するため、素早い動きにブレが生じることがあります。これをIMUが補完することにより、Inside-Out方式が成り立ちます。
*1:Inertial Measurement Unitの略で、慣性計測ユニットのこと。加速度センサーと角速度センサーで構成されており、ユーザーの位置、速度、方向の変化を検出する。
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ポジショントラッキングによって実現されるXRデバイスの機能
XRの各領域でポジショントラッキングは次のように活用されています。
没入感のある仮想空間内で、現実世界の壁や障害物にぶつからずに自由に移動できる(VR)
VR対応のデバイスには現実世界の空間情報をスキャンして部屋の形や壁・障害物の地図を作成できる「空間マッピング」機能があります。空間マッピングのデータを利用すれば、現実世界にある壁や障害物の位置に仮想の壁などのオブジェクトを配置することができます。
仮想空間に没入した状態でも、ポジショントラッキングにより空間のどこにいるかが分かるため、壁や障害物を避けて自由に歩き回れます。
仮想のオブジェクトがまるで現実にあるかのように見える(AR)
ポジショントラッキングを利用することで、ユーザーの移動を仮想空間に反映する「6DoF」が実現できるようになります。これにより、空間上に表示している仮想のオブジェクトがユーザーの動作に連動して見えるため、まるで現実のもののように感じられます。
MiRZAやXREAL Air 2 Ultraで体験可能です。
複合現実とインタラクション(相互作用)し複雑な作業ができる(MR)
MR対応のデバイスも空間マッピングを行っており、実際の風景やモノを忠実に再現して、仮想のオブジェクトを違和感なく合成することができます。その中で、ポジショントラッキングによってユーザーの動きが反映されるため、複雑だったり、正確性の必要な作業やトレーニングなどに最適です。
例えば、自動車整備工場では、実際の自動車の上にエンジンなどの仮想の部品を合成して表示することで、修理・整備作業のガイドとして活用されています。部品の位置が誰にでも分かりやすくなるため、マニュアルを見ながら作業するのに比べ大幅に作業時間を削減できます。
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